ラン自生地は自然の培養基である

 ランの自生地。
 ここでは、胚乳の具備しない種子が芽生える。
 プロトコームの数ヶ月を経て葉が発生する。
 腐生ランの場合は、プロトコームからリゾーム、菌根になる。
 これは、その場所にランが生きられる糖と養分があるということである。
 ラン菌が共生して、ラン菌の菌糸がランに必要な糖分、養分が供給できるということは、
 その場所にそれがあるということである。
 1910年代、ナドソンは、無菌の状態で、この自然が作り上げた培養基の作成を行い、
 これにランの種子を蒔いて発芽に成功した。
 自生地では、この発芽出来る培養基は、そこに生息している微生物、ラン菌が作る。
 微生物の、ラン菌の力を借りないで、人間が作り上げた。
 これは、近代無機化学の成果であり、ランを科学化して栽培する画期的な転機にもなった。
 ナドソンが合成の無菌培養の研究を行ったが、
 その時代には、同時に別な研究者は、培養基上でラン菌と共生させて発芽を試みた。
 現在もラン菌との共生で難発芽性ランの発芽が試みられているが、
 画期的に成功したということににはなっていない。

 ナドソンの無菌培養発明から100年後も、この無菌播種法が全てのランに適応できない。
 科学が未だにランの謎を全て解き明かしていないのである。
 現在、無菌培養で発芽できないランを「難発芽性ラン」と呼称しているが、
 自生地では「難発芽」ではない。
 科学がランの全てを解明していないに過ぎない。
 ラン菌の全てを解明していない。
 従って、ラン菌に代わる培養基が作れないのである。

 ランの根から、菌を分離し、この菌を培養して、培養基上で種子と共生させて発芽させる。
 こういう試みがなされているが、これが自然の自生地の営みを再現しているのであろうか。
 この培養法では、ラン菌の急激な繁殖を抑えるために糖の添加量を少なくしている。
 更に、ラン菌のエサになるセルロース、リグニンが添加されていないから、
 自生地における炭素循環が構築されていない。
 この培養法は自然と似ているようであるが、枯れ落ち葉の分解という炭素循環が構築されていない。
 ラン菌は材木腐朽菌である。
 枯れ落ち葉のセルロース、リグニンを分解して低分子の糖にする。
 この糖でなければならない。
 培養基に添加する砂糖の糖に、微妙な違いがあるのかも知れない。


 ラン自生地における枯れ落ち葉、植物死骸があるところには、必ず材木腐朽菌が生息している。
 逆にいえば、枯れ落ち葉、植物の死骸のないところではランは自生出来ない。
 これがラン科植物の全部に共通している。
 世界中のランの自生地。
 プラントハンター的には、地図の上に表記される。
 しかし、その場所に行けば、どこにでも自生しているわけではない。
 そのエリアの、非常に限られたところである。
 まさに点である。
 ラン菌という菌が、そのエリアで常に勝ち組みなっているということはない。
 枯れ落ち葉の炭素エネルギーは、他に菌によっても大切なもの。
 多くの菌に夜リグニン、セルロースの争奪戦は熾烈に行われている。
 自生地であっても、ランにとって安楽な楽園ではない。
 楽園でないからこそ、菌根になり、多様な進化をした。
 同じ種でも、生息するエリアの環境に合わせて形態を微妙に変化させている。
 この変化が植物分類する場合見解の相違になる。
 この微妙に異なるエリアの中でランは多様な進化をしたことになる。
 材木腐朽菌にも多くの種類の菌がある。
 全ての材木腐朽菌とランが共生するなら、問題は簡単であるが・・・。
 しかし、ランは特定の菌と共生した。
 ここに・・・深い意味があると考えるべきであろう。
 その意味とは・・・。
 それが、未だ解明できていない。

 ランは菌根植物。
 この植物は謎に満ちている。
 無機化学肥料を使う栽培が、近代の農業、園芸100年の主流の中で、
 この菌根植物の研究が疎かにされてきた。


 宇井清太によるラン菌に新発見。
 この菌が生息するSUGOI-neの開発によって、
 ようやく栽培現場で、鉢内にラン自生地の炭素循環を再現することが可能になった。
 SUGOI-ne栽培のラン、その他の植物が、
 これまでのコンポストでは見ることが出来なかった生育をすることが実証された。
 地球上の枯れ落ち葉に生息するほとんど植物で実証された。
 この実証を科学的に考察し、革命的な栽培法が構築された。
 ラン菌による炭素循環ラン栽培法である。
 この栽培法は、前記したように、ラン科植物のみの栽培法に留まらず、
 枯れ落ち葉、植物死骸が存在するエリアに自生するほとんどの植物に適応できるものである。

 
 
 
 
 

 
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